此花アーツファーム構想とは何か。のトークイベント
2008年 12月 05日
「このはな咲かせましょう」のトークイベント、「此花アーツファーム」って何?が開催される。
此花区で動き始めようとしている事柄について語り、今後の方向性を模索できれば良いと思っていた。
僕はこの10年、地域の中に対話と実験が発生する仕組みを模索しながら活動してきているように思う。
10年前に比べると比較できないほど、多くの地域が対話の場を持つようになったものの、まだまだ一方通行の対話(・・・それって対話とはいわないですね・・・)の場ばかりで、ちゃんとしたフィードバックが重ねられ、お互いの対等な学習へと繋がるようなあり方の対話の場はほとんど経験したことがない。
地域実験についても、いまだにイベントとしてパッケージ化しようとする癖が身についていて実験的視線で編集し、実験の観察と分析とフィードバックと学習に興味のある人を集めることに力が注がれにくい。
表現者はさまざまで、極些細な違和感にこだわり没入し、あるいは発散し・・・いまだ作品化する編集能力にたどりつけない場合もあるとは思うが・・・、多くの種を、あるいは菌を、ふつふつと発酵せせることが重要であることに変わりはない。
このような地域実験の場合、問題になるのは「まち」と表現者をつなげる媒介者の意識だと思っている。
媒介者がどれほど本気でまちの問題に介入するつもりで、まちのどの部分と表現者のどの部分の化学反応を引き出そうとするのか・・・。
まちに潜伏するどの素材や人材や組織や場に対して、何かすごいことが起こりそうな、期待に満ちた表現者をぶつけることができるかどうか。
仕掛ける段階ではある程度の予想はしているものの、問題は予想を超えた事柄の発生を期待できるかどうかだと思う。
予想内の範囲を超えずに物事が進むことは、むしろつまらない。
今回の此花での実験は実は「大丈夫かな?」と思っていた。
美術にかかわる人ですら、いまだに「アート」というと「飾り」だと捉える常識は蔓延しているし、無関心なパブリックアートなどへの無駄な税金投入に対する疑問を投げかける住民も多いはずだし・・・僕もその一人ですが・・・
外から見に来るアート関係者にとっては、地域の中でアートを持ち込む全国で流行しているような数千万円や数億円使って行われるアートイベントと同質のもの勘違いされると、そのマネジメントや作品の完成度において相当な批判を得てもおかしくないし・・・
たまたま声をかけられて外からやってきた作家や表現者にとっては、まちのどの部分にどのように関わるかについてのナビゲーターが不在では、突然放り込まれた作家自身、戸惑い、だれと対話する中で進めて良いのやらの疑問と不満が不安にさせ・・・
・・・ところで、左の写真は今回のプロジェクトの公開前日にざっとプロジェクトサイトを廻ってみて、その中で気になった写真です。
なぜだか、出品されている作品もありますが、その周辺にもともとあった壁紙や壁画や、この写真のようにたまたま地域の小学生が商店街でお店屋さんを行っていた・・・ような写真も混ざっています。・・・
個人的には、ここの空間が実は今回のメイン会場だと思っていました。
他の場とは違い、ちゃんと新しいアーツとして仕掛けられた空間。
いわゆる飾りもありますが、問題は飾りではなくて、そのプロセスも含めた空間のストラクチャーの部分で、それを観客に伝えることが一番重要な今回のポイントの空間。
たぶん、今回はこのアパートの2部屋が一番重要で、そこのストラクチャーの部分をしっかり伝えることが一番のアートプロジェクトだったと思うのですが・・・
当日ちゃんと伝えられていたかどうかが気になるところでした・・・。
そしていわゆる唯一のゲストアーティストが浅井君。
ただし、浅井君が個人の表現として・・・ワークショップやイベントや企画展覧会を行ってくれました。
そのモチベーションは正しくて、「ひとりでこもって作品作っても楽しくないので・・・」との理由から自分の友人を外から連れてきて・・・。
まちの道路に白線を焼き付けて作品化する作業は結構交渉が大変だったとか。
しかし、その交渉作業や実際に行ったワークショップ的な行動がまちに対しては一番重要だった様子。
結果としてできた風景はちょうどいいぐらいにひっそりと存在するぐらいのものができていて、バランスとしてはよかったかな。
それにしても世の中には本当に面白いことを考える人がいるものだと思う。
いや、思うだけだったら簡単だけど、それを実際に形として立ち上げることができる行動力と制作力・・・手が動くというのがやはりいい。
もっともっとまちに手をいれたい。
手を入れつつ、そこで出会う具体的な素材や人材などの因子としっかり対話し、面白くて大切な方向へと繋ぐ。
その先にまちは自然と作られてゆくんだと思うんだけどな。
今回のプロジェクトは政岡土地という此花区で数世代にわたり多くの土地を引き継いできた人格が、自分の地域をどうにかしたいという切実な思いから発生している。
この複雑に歪んだ構造の今の時代に珍しいほど、ある意味健全でストレートな実験。
魚が獲れなくなった漁場の水質を憂いて、漁師達が森林保全活動に力を注いだり、漁場に繋がる河川の流域の農薬を多用する農業のあり方に対して働きかけを行う活動に似ている。
それに対して僕は「此花アーツファーム」という構想をぶつけてみた。
地域住民が想像力と創発力をみにつけるために必要な因子と回路が結果として発生するような仕組み。
次の時代の都市生活を楽しむ創造生活圏として・・・。
昭和40年代の建築物に内在していたそれ以前の地域が持っていたコミュニティのあり方まで触れてゆきたいですよね・・・。
で、問題はこの実験から発生した因子をどのように読み込むかということと、どのように繋げるかということ。
・・・で、それを行うのは誰?・・・ということなんですが・・・。
ということで、これから始まるんだということで、これから始まるプロジェクトに興味をもって一緒に動いてくれそうな人と出会うための機会だったと思うのですが、大丈夫だったでしょうか?