
1年ぶりの
取手アートプロジェクト=TAP。
去年もすごかったが、今年もすごい。
なんだかんだで
3年前から毎年参加しているので、僕としては今年で4年目の取手。

なんだか家族に会いに故郷に帰る気分。
いや、故郷以上に関係の深い人たちがたくさんいて、皆の成長に接するのが楽しみな場所なのかもしれない。
去年はゲストアーティストと公募による若手作家が交錯しながら、かなり派手な展覧会を行ったが、今年は駅前に拠点をつくって、取手各地の作家の制作スタジオを紹介する控え目な年なので作品はないのだろうと思っていた…。ところがところが・・・。

今年のゲストアーティストが
中村政人で、彼の
M1を使ったプロジェクトに多くの作家が参加し、しかも広範囲に点在しているということで、なかなか見ごたえのあるプロジェクトになっていて驚いた。
M1というのはセキスイハイムが1970年代に開発したプレハブユニット。
それを重ねたり、並べたり、立てかけたり・・・様々な人が関わり、M1を過剰に使い、取手のはらっぱを過剰に使い・・・あらゆる人材やあらゆる組織の関係を過剰に使い…
その結果、取手周辺の風景はあきらかに変化していた。

いつも挑戦的な社会実験を繰り返し、しかもその経験値を重ねてゆくTAPであるが、今回の取手は他の地域で拡がりつつあるアートプロジェクトとは明らかにいくつかの点で違っていた。

ひとつは街に作品をちりばめるときにM1というフレーム…いわば額縁や台座の役割を与えたツールに匹敵するモノゴト…を活用しているという点。
そのフレームがアーティストのプロジェクトのひとつという幾重にも重ねられた仕掛けの厚み。

これにより、街へのアプローチのスケール感とイメージが増幅され、少なくとも、作品がプロジェクト自体が街に埋没する現象を最低限に食いとどめているように思える。

もうひとつは、街のシクミに深く関与し、街に潜在する多くの関係が利用されているという点。
当たり前のようにそこにあるが、多くのモノゴトが社会的常識の例外として仕掛けられている。

このような
団地の集合商業施設のあとをまるごと賃貸のアートスタジオとしてオープンさせようとする試みも実現しつつある。
プロジェクトから派生する関係の連鎖が新しい風景を作ろうとしている。

これまでのプロジェクトによって街が重ねてきた経験が街のシクミに深く関わるところで、かなり多くの人たちが熱意と誠意を持って動き続け、信頼関係を獲得しつつあるという証…。

2年前に始まったTAPツアー。
地元のゴルフ場がマイクロバスを運転手つきで提供してくれて、去年からの固定客もいる様子。

今年はその周辺の街までツアーで出かけて、作家のスタジオを巡る。
取手周辺に多くの作家が定着して行くのもTAPの活動の連鎖がもたらすものだと思う。
僕が取手に入った日に周辺のアートプロジェクトに関係する人たちが集まってオープンディスカッションを行っていた。話を聞きながら面白いことに気づく。
作品を次の時代の価値観を作り出す苗にたとえるとすると・・・
その土地の風土にふさわしい苗に注目して、その
発芽を試みる我孫子。
外来種の選りすぐった希少な
苗を育てる試みの守谷。
実ったあとの作物を
街に活かすことを試みる柏。
そして土壌改良や新種の苗の開発、肥料など、成長し開花するしくみの研究を試みる取手…
…
それぞれの街の役割は違う。それがうまく連携しつつ、活動がさらに連鎖をうみだしてゆくと面白い。
で、取手は
今月25日まで。