広島県灰塚大橋の欄干作品「ハイヅカニイキルモノ」
2007年 07月 31日
広島県、現在の三次市の三良坂町にある灰塚ダムエリア。
僕が最初にその地域に関わったのは、1996年、鹿児島を離れる決心をして東京から岐阜、福岡と引越し先を探してトラックで移動していた夏、灰塚アースワークプロジェクトという地域活動にアートが絡む当時はかなり実験的なプログラムに参加するのがきっかけだった。

その戦い抜いた人たちからのオーダーでそのダム湖にかかる橋の欄干のデザインを行ったのがアーキプロという建築事務所の吉松さん。
その吉松さんから2001年にその欄干の硝子板の絵のデザインを頼まれた。
欄干の両側に190枚の硝子板がついている斬新なデザインの橋で、そのガラス板に何か絵を描いてくれというオーダー。

ガラスに描く絵はガラス工場でエッチング加工するという話。




ダム湖にかかる橋を記念館にみたてて、水没するエリアで暮らしていた生き物と人との関わりの記憶を保存しようという試み。
彼らは子どもの頃を思い出しながら・・・91種類の灰塚に生きる動植物をリストアップしてくれた。

ダム建設に対して長年戦ってきた表情険しい戦士達が子どもの表情になり、あの魚が・・・、あの虫が・・・あの鳥は・・・あのあたりでは・・・と昔話に華を咲かせる。

ひとつのガラス板の図柄に対して原画を5枚も描かなければならないのはちょっと誤算。(ガラス板へのエンボス加工の工程で5種類の深さの違う絵を描かなければならなかった。)
結局ストライプ図案やタイトルガラスやリスト表示図案も含めると550枚を超える図面を制作したことになるなぁ。

・・・という作品。
灰塚にイキイルモノのリストはそのまま灰塚ダムによって沈んでしまった動植物のリストと重なる。
印象的だったものがある。

最後に加えたれた動植物は「稲」だった。
それから6年。
その橋がこの4月に完成したという話しを聞いて、はじめて見に行く。
しみじみと人気のない橋をわたる。

噴水のライトアップと橋のライトを眺めにきたのか、数名のバイクが駐車場に溜まっている。
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結果的に地域に常設で残っている藤浩志作品としては今のところ一番良質のものかもしれないなー・・・
機会があれば、ぜひ見に行って・・・くもの巣の掃除をしてあげてください。