新潟大学のアートプロジェクト、なかなかいいぞ!
2007年 10月 15日
その影響もあるのだと思う。新潟大学の学生が中心となって自分達の活動する内野という地域でアートプロジェクトをはじめて数年になる。
学生が企画し、ほとんど学園祭のノリのアートプロジェクトかと思っていたらそんなことはない。
これは自動販売機の横にカフェスペースを作った作品。撮影したのが夕暮れだったのでこんなに暗くなりましたが本当はとても明るい空間です。
街のいたるところに濃密な作品が仕掛けられて、かなり濃厚な住民の会話を耳にすることしばしば。
作品について畳の上で語ろうという企画の一コマ
オープニングには新潟市の西区の区長さんをはじめとしていろいろな地元の人が大勢集まり、アートが地域に定着している状況に驚く。
先日紹介したすごい作家の作品も展示されているが、ほとんどは学生の習作が街中に点在されるという状況の中、たまに力作に出会う。
これは住民から古着をあつめてそれを縫い合わせて制作された共同制作の作品。
工学部系や教育学部系の大学院レベルの学生が入り混じり共同で行うのでかなり面白いものがつくられる可能性を秘めている。
これは、街中を走るタクシーに仕掛けた作品のカタログ的な掲示板。
実際にこれだけの数の作品化されたタクシーが街を走っているのだとか。
共同制作といえば、僕が出た京都市立芸術大学では一年生のときに自由にグループをつくり共同制作を行う授業があった。今もあるのかな? そのときのメンバーが中心となってその後大学の演劇部の中心メンバーとなり、そこから紆余曲折を経てダムタイプシアターというプロジェクトが生まれた。 共同制作の授業がなかったら…ダムタイプはなかったんだ。
・・・あなどりがたり、学生の共同制作・・・。
学生時代にいろいろな立場の人間が同じ場に関わりつつ何かを作り上げようと濃厚な時間を共に過ごすことはとても意味があることだと思う。
その機会として地域が学生に場を開放し、協力しているというかんじ。
学生が地域を通して実社会の現実に面するという意味も持つ。
大学の授業としてはかなりいいプログラム。
特に秀逸だったのがこのビニールハウスの作品。
農業用のビニールハウスの中に無数のナイロンの糸がぶら下がっているだけの単純なものだが、奥行きが深いためにビニールが重なって妙な空間を作る出していてなかなか感動的。
たまたま友人が中に入ってゆくと、その姿が霧の向こうに消え行くように見えなくなる。
建築の学生と絵画の学生、数名の共同制作の作品。何か大きな・・・、鑑賞者を包み込むような空間の作品を作りたかったのだとか。
もともとスイカの栽培のために使っていたこのビニールハウスを借りるために、スイカの収穫の仕事を手伝ったりするプロセスの上に作られたのだとか。
彼らの将来が楽しみ・・・。
街の片隅で遠慮がちに設けられてた遊技場の作品もかなり良かった。
窓にこびりついたホコリに指で描いた看板。
学校帰りの子ども達がランドセルを担いだまま、次々に遊びに来る空間。
かなり肩の力が抜けた状態で仕上げられた空間は、実は相当面白いバランスとセンスで満ち溢れていて心地いい。
遊びを促すツールが美術作品であることを覆い隠しているが、僕にとってはとても良く構成された空間に思えてならなかった。
さりげなく窓辺に置かれている置物やポストカードがビミョウに面白く、自然と眺めてしまうもので溢れていたりする。
特にこのカード・・・いったいなんなんだ! 新潟大学、恐るべし。
全部の作品を見て廻る時間がなかったけど・・・、作品のバリエーションもかなりあり、地域の子ども達や親子、カップル、若者・・・本当に楽しそうに作品を体験して廻っている様子を見ていても、結構幸せなプロジェクトだと確信。
運営面ではかなりの問題は抱えているけどね。でもそれでいいのかもね。
学生の地域の様々な場を使った実験を地域住民や大人たちが暖かく見守って支えている状況なんだし。
劇場空間でもなく、デジタル空間でもなく、農業用のビニールハウスでフェードアウトを体験できるのが面白いですね。