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繋ぐ術

田中忠三郎の伝える精神 の展覧会の準備でもろもろ文章を書かねばならない。新聞に3回連載で紹介してもらえるというので、どのような形で書いたらいいのか模索中。

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刺すという行為と縫うという行為は全く違うということをこの展覧会を企画する中で出会った八戸在住の南部菱刺しの作家、天羽弥生さんに教えられた。

薄手の麻布の経糸と横糸のわずかの隙間に糸を通し、二目、四目と偶数の目をとりながら糸を横に通す総刺し。繊維そのものが入手しづらく、高価で貴重だった東北の地において、多くの女性たちは様々な思いで「刺す」という行為を重ねていった。それは寒さを凌ぐための衣服を作る行為であるとともに、厳しい日常から精神的に逸脱し、より高度で自由な世界に繋がるための技でもあり、暮らしの中でだれにも迫害をうけない居場所と時間を確保するための術でもあったと思う。その女性たちの暮らしぶりに思いを馳せながら多くの衣服を収集していた人物が田中忠三郎である。

彼が収集する中で触れようとした精神、あるいは東北の地の暮らしの中から醸し出された衣服たちが伝える精神はいかなるものであったのか。


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by fuji-studio | 2014-10-26 11:07